社長の一言 No.1-100

2003年〜

2003年7月1日

1. ハイテク企業----

高付加価値商品を創ること。弊社が製造する試薬のグラム単価は百万円以上。世界初の商品ならセールスは不要。注文はユーザーから自然に。グラム単位の生産にはトラックの発着場も巨大社屋も不用。 必要なのはヒラメキ、努力、有能な研究員数人。

2. 実業界---------

実に実力主義。それと比較して、大学は---。

3. 若者の夢-------

今の日本では、若者が夢をもてるのはスポーツ選手ぐらいだろうか。幼稚園から始まって、大学、大学院と延々と続く限りない勉強。大学卒業者は同世代の約半分。そんなに勉強好きが多いとは思えない。エリートは数%もいれば十分だろう。若者をもっと自由に、元気にできないだろうか。高学歴社会が若者の元気を無くし、日本経済を沈滞させている!勉強以外にも大切な事は沢山ある。

4. 研究者の夢-----

不可能を可能にするのが研究。誰もできないことを実現するのが夢。わずか数日で年俸を稼ぎ出す事、イチロー、松井並に。 (お金が問題ではない。実力と研究の価値を世間に示したいだけ。)

5. マル暗記-------

勉強好きの人はよくマル暗記する。すぐに忘れてしまう事を知りつつも。どんなに暗記してもコンピューターにはかなわないのに。 無駄な抵抗はしない。もう少し理論的に、楽しく!

2003年8月5日

6. 日本人の体質---

このところ日本人の体質の悪い面ばかりが出ている感があるが、けっして悪い面ばかりでなく、とてもすばらしい世界に誇れる善い面が多い(と思いたい)。

7. 勤勉、凝り性----

もはや古語になってしまった感があるが、少数とはいえ古きよき時代の体質を引き継いでくれる若者がいてくれる事は確実である。これらの若者に日本の将来を期待している。

8. 実力主義-------

今や日本は、期せずして世界に冠たる実力主義社会となった。なぜなら、国民の過半数が大学卒業以上の高学歴を身につけ、学歴の点では国民の大半が横並び状態になった。これでは、いかに有名校を卒業しようとも学歴だけで一生、楽できるとは思えない。かくして社会に出た後で活躍できるかどうかは各自の実力、努力だけで決まることになった、と言えよう。

9. 夢の達成-------

夢を達成する時期は人生の最終段階であるか、あるいは達成できなくても良い。なぜなら、最後の最後まで夢を追い続けられるから幸せな期間が最も長い。小さな成果でも、苦労して、苦労して、苦労して見つけた時の感激、達成感は大きいものです。

10. 至福の時-------

弊社も1999年に創業してまる4年になります。お陰様で、4年目にして黒字を達成できました。大学教官としては最大の賭けをして、社員や家族にも苦労をかけてばかりですが、「やっとここまで来た」との感想です。 夜9時過ぎまで大学の研究室に居て、それから会社に立ち寄る時間はまさしく「至福の時」です。

11. 大学発ベンチャー ----

大学の知恵を産業界に生かし、大学の主体性を維持しつつ、最終的には大学を活性化する。ベンチャーキャピタルにも、株式公開にも全く関心が無く、自力で発展する、弊社はそんな会社でありたい。 リスクを伴なう研究は、本来は大企業で行うべきでしょう。大学発ベンチャーの名を借りた、「大企業のリスク分散型従属会社」が多すぎませんか?

2003年9月1日

12. 目標とする研究--

よくある質問に「どんな研究を目指していますか」と聞かれます。 私の答え「できるだけ手をかけずに良い商品をつくる事。例えば、ダンボール箱に原料を入れて、おまじないをかけておくと翌日には目的の化合物ができていること」。もちろん何もしないでよい商品ができるわけではないが、手をかけるほど生産コストは高くなり商品としての競争力を失う事は確実である。

13. 難しいテーマ(1)-

長年、誰も出来ないテーマを手掛けるときには、常識的な手法は取らない。 なぜなら、常識的な手法が通用するなら、とっくに他で目的を達成しているはず。そんな時には、これだけ変わった方法は誰も検討していないはず、と思う方法から始めます。例えば、不安定で分離しにくい天然物を取り扱うために、私は独自のHPLC充填材を開発し、充填して分離しています。 もっとも、HPLC用の充填材を分級(粒揃え)したくて、シリカゲル製造会社に依頼した時には「いまどき充填材を検討される人はいませんよ!」と笑われてしまいました。それでも、数週間後に私が分級したシリカゲルをお送りしたら「分級された機械を買わせてください」と、すぐに来られましたが---。

14. 難しいテーマ(2)-

高い山ほど裾野が広いものです。高ければ高いほど、一見無関係と思われるほど広い分野の協力が必要なのです。ワトソン・クリックのDNA二重螺旋や、ウッドワード・ホフマンの規則のように。

15. 難しいテーマ(3)-

「大手企業が相手ではかなわないでしょう」とよく言われます。 大企業が得意なのは、金力、人力です。本当に難しい仕事は、どんなにお金や人をつぎ込んでもできないでしょう。なぜなら、大勢が集まるほど、無難な方策を採用することになり、お金があればあるほど金任せの手法になるのです。一人で研究するのは寂しいですが、数人の仲間とある程度のお金があれば、充分大企業にも対抗できます。

16. 不幸な出来事---

私の知人の一人は、有名大学大学院を卒業し、一流企業の研究所に勤務していたエリートであった。40才前後で年俸1千万強であったそうだが、故あって退社した。この就職難のさなかでは再就職もままならず、派遣の仕事で年収は200万円程度となり、妻子とも離別したと聞いたのは約1年半前であった。初任給はせいぜい300万円台であろう。40歳にしてその3倍の年俸とはうらやましい限りではあるが、その金額が初任給の3倍とあっては、新人3人分の成果を要求されるのは必然。これを達成できるエリートがどれだけいるだろうか。大手企業のメンツのために多くの社員が犠牲になっている。至急、社員が安心して働ける職場をつくる必要があろう。 つい先ごろ、知人は他界した。無残、無念の限りである。

2003年9月16日

17. 兼業のメリット---

社長業は私の兼業であり、私の本務は岐阜大学の教官である。1999年の創業以来、着実に売上が伸びつつあり(3年間平均で年 70%増)、やっと軌道に乗ったとホッとしたところである。もちろん、兼業する以上は個人的メリットも多少はあるが、むしろ大学側のメリットが非常に大きい。例えば、1.年間約10回のマスコミ報道による大学、学部の知名度向上、2.研究室の研究費や年間数千万円相当の試薬(弊社商品)の提供、3.就職先の確保、等のメリットは計り知れない。もちろん私の定年後の再就職先にもなるが。

18. 世間の実力-----

弊社では現在約100種類の試薬を製造して、複数の有名試薬会社の他に薬品会社、食品会社等の約50社にも直接販売している。その一部は外国にも輸出されていると聞く。これらの試薬は、わずか2名の研究員(いずれも私の大学所属研究室出身)で作っていると話すと誰もが驚かれてしまう。もちろん優秀な社員が揃って頑張っていてくれる事は間違いないが、それにしても、大企業の研究員が何年努力してもできない事が、弊社では数ヶ月で完了しているのは何故だろうか。

19. 採用(就職)活動-

学部卒業生の就職シーズンは4〜6月、修士卒業者に至っては1年半も前から就職活動が始まり、このところの就職難で学生諸君は研究どころではない。研究室によって実験量、質共に相当異なると思われるが、企業の皆さんはそんなことはお構いなしで早い者勝ちとばかりに採用されるのは何故だろうか。応募者が100倍以上になったからといって、優秀でまじめな学生が選ばれているとは限らない。 人事担当者も、学生も、採用(就職)活動に無駄な時間をかけることに生きがいを感じているとしか思えない。この経費や時間は国全体の損失であることは明白である。早くこれを是正できるリーダーが現れて欲しいものだ。卒論生の場合、年が明けてから、卒業論文研究の実験ノートを見て判断されてはどうだろうか。

20. 研究のバロメーター-------

大学の所属研究室では現在、博士課程2名、修士課程5名、卒業生5名が所属しているが、1H-NMRは平日15〜20検体を測定し、重クロロホルム年間3kg、HPLCチャート50巻を消費する。天然物を研究する4年生の場合には、夏休みまでにHPLC分析、分取、NMR測定、解釈ができます。お陰様で、卒業後に研究職からはずされたという話は殆ど聞かない。

21. 世間の流行(1)‐-

研究動向を見ると、いかに多くの研究者が安易に流れているかに気付く。私の専門である天然物化学では、天然から複雑で生理活性がある化合物を分離構造決定できるようになるとこれが流行り、その有機合成、不斉合成が可能になると流行る。金属、遷移金属を用いた合成反応が流行ると、周期律表を研究室に貼って、毎日、それとにらみっこ。 できれば流行を作り出したいものです。

22. 世間の流行(2)--

HPLCを用いた分離精製とNMR、MS等の機器分析が発達して、簡単に微量で構造決定ができるようになると流行り、身近な生体成分の概略が解るとアフリカや南米産、深海生物等がその対象になっている。それも、わずか数mgの純粋な化合物が得られれば、数億円の高級機器で簡単に構造決定が終わってしまう。「研究に貢献したのは、研究者ではなく高級機器と外国出張旅費だった」とならないようにしたい。年間数十回の外国出張、何億円もの高級機器購入、研究員の給与確保のために、有名な先生方はお忙しく研究室に落ち着いてはいられない。研究がまるで金力、権力の競争になっている感がある。研究はもっとじっくり楽しみたいものです。

23. 世間の流行(3)--

学問的な流行を作り出した人はノーベル賞が与えられて広く賞賛される。しかし、それに追随するだけでは寂しい。約40年前のフグ毒テトロドトキシンの構造研究ではドラム缶何杯ものフグの内臓から純粋なテトロドトキシン70g以上を取り出し、その誘導、分解反応の末に構造が明らかにされたと聞いている。この難題を解決するには複雑な生物現象への純粋な興味・洞察力と日々の弛まぬ努力が不可欠であろう。私の知人の一人は沖縄の海で教授自らが潜って研究材料を採集して研究していたが、ある日、採集中にしけで行方不明となり帰らぬ人となった。ご冥福を祈る。

24. 日本沈滞の理由-

1.体質の変化:将来のことを考えない、楽して良い思いをしたい、苦労したくない。その結果、将来を夢見て努力することができない。
2.変革期には革新的なリーダーが必要だが、殆ど見当たらない。
3.男性の軟弱化:若者の男女比の偏り、早くからの交際等による。
4.女性の能力を生かせない。一部には女性の甘えも。
5.安易な考え:例、中国、東南アジアへの企業進出。労働力が安い国で作れば儲かるのは当たり前。ただし、永遠に中国の労働力が安く、日本の技術的優位性が永遠に保証されるなら、という条件付なのです。5年後には、「殆どの企業が撤退、国内には生産体制がない」とならないようにしたいものです。

25. 日本経済と日本人の体質

(1)日本人の体質---- 日本では、戦後、米国流の民主主義が導入されて今日に至ったが、その結果、高度成長期を経て今日の沈滞に至ったことにはある種の必然性を感じる。 元来欧米人は狩猟民族であり各自が独自に行動して独自性を重視するのに対して、農耕民族であるアジア人は土地に根付いた生活で、もっぱら協調性を重視する。当時は地域をまとめる先見性と良識のあるリーダーとその補助役がいて、その他の大多数はその決定に従っていればよかった。何しろ農耕では、隣家が田植えをするのを見て真似をすればよく、独自のやり方、意見は殆ど必要がなかった。したがって、90%以上は、お上(おかみ)や地域の方針に従い、集団の和を重んじる良民であった。

25. 日本経済と日本人の体質

(1)経済発展-------- そんな国民が何故、1980年代に世界に冠たる一流先進国になったのか。それは、明治の開国により欧米の遥かに進んだ物質文明に触れて、明快な国の目標ができた事に始まる。この目標ができて以来、政府(官)主導による「欧米に追いつき、追い越せ」の号令の下、一致団結してその目標に突き進んだ。日本人の農耕民族特有の集団的まとまり、几帳面で生真面目に努力する体質、より優れた物へのこだわり等の長所もあって、1980年代に世界最高の経済繁栄に成功した。

25. 日本経済と日本人の体質

(3)挫折------------ 目標を達成して豊かな物質文明を享受し、長期にわたる右肩上がりの経済を経験した今日、勤勉であったはずの日本人はその日暮らしの、「将来を夢見て努力する事のできない体質」になってしまったのも必然だろうか。 バブル崩壊の今こそ明治以来百十年の転換期であるが、残念ながらそのリーダーが見当たらない。目標を失った今日、個人が意見を持たず、従うことの上手な人が大半を占めるこの国で、リーダー不在は深刻である。

25. 日本経済と日本人の体質

(4)リーダー不在----- 日本では何故リーダーは現れないのか。その答えは、「多数意見を尊重する」欧米風の民主主義を、大多数が自己の意思を持たない(正しくは、意見があっても表に出さず、大勢に従って自己の保全を図る賢い)日本人にそのまま採用したためであろう。その結果、「あるべき姿をめぐっての主義、主張、解決策等についての徹底討論によりリーダーを選ぶ」欧米風の民主主義ではなく、ちょっとした多数派工作に長けた人がリーダーに選ばれる事が習慣となっている。

25. 日本経済と日本人の体質

(5)解決策---------- 日本ではリーダー適任者が埋もれてしまいやすい。リーダーを発掘する、弛まぬ努力や、適宜よき参謀を抜擢する努力が欠かせない。適任者はどこかに埋もれているに違いない。

.26. 日本人の独創性-

幕末(江戸幕府末期、1800年前後)に、日本は欧米の科学に大幅な遅れをとっていることに気付き、欧米の科学文化を吸収することに必死となった。その甲斐あって1980年代には米国をも凌駕する経済繁栄を獲得したが、この間には欧米の科学に追随するために国を挙げて全力を注いできた。欧米への追随に必死になったばかりに、自国の輝かしき文化、習慣、自尊心までもかなぐり捨ててしまうほどの欧米信仰が続き、あまりにも急速に欧米文化を移入するために多くの犠牲を払うことになった。その一つが独創性である。もちろん、大きく水をあけられた科学技術を急速に挽回するには、独創的手法の確立よりも、模倣する方が効率的であった。その結果、原理の解明よりも応用が重視され、独創性よりも真似事に必死になってしまった。 確かに、全く新しい現象を解明する独創的研究には時間がかかり、膨大な努力、経費、時間がかかる。この膨大な投資を省いて欧米の真似事で済ますことは、欧米のレベルに達するまでの手法としては安上がりであった。しかしながら、世界のトップに躍り出た1980年代以降は、長年続いたこの安易な価値観を本来の姿に転換する事ができず、膨大なつけを払わされつつある。 日本人には「独創的研究は不向きである」との意見もあるが、私は、200年近く続いた安直な欧米追随、欧米信仰の悪習が日本人の創造性を阻害してきた、と考えている。決して日本人に独創性が無いのではなく、元来内在している農耕民族特有の「人並みを持って最善」とし、秀でた者への妬みによる「出た杭は打たれる」との横並び感覚と、上述の創造性軽視の悪習に原因があると考えている。 ちなみに、私の専門では恩師(ハーバード大学教授1974-現在)はもちろん、多くの世界をリードする研究が達成されている。日本人ノーベル化学賞受賞者が続出していることからも日本人が創造性豊かな国民であることは明らかである。 問題はその評価基準にある。論文数を数えて研究者の研究業績を評価するという極めてシンプルで、独創的?な方法を採用しているのは日本ぐらいであろう。論文数では研究の価値は測れない。ノーベル賞はたった一つの論文でも受賞できるのだから。

27. 幸せな研究人生--

大学院の高等教育が一般的になった今日、修士、博士も珍しく無いが、修士で2年、博士はさらに3年の研究期間を要する。末は博士か大臣か,と言ったのは明治時代であり、、今日では学歴だけではなかなか元が取れないのも事実である。私は一浪して大学へ入学したが、幸いその後は順調で28歳で博士号を取得、ハーバード大に2年留学して職(大学教官)に就いたのは30歳の時であった。60歳を定年とすると勤続年数は30年で、高校卒業時に就職した場合の勤続年数42年と比較すると12年も短いが、幸い何よりも好きな研究をしながら、それを教える事で収入が得られる職業に就けた。国の費用で趣味の研究を楽しむ、そんな贅沢ができるとは夢にも思っていなかったので、まさしく天職にありついたと思っている。おまけに、この会社も順調で定年後の再就職先を自分で確保できたので、まだまだ楽しめそうである。 28. 過剰投資の場合も‐ 30年前に中学、高校卒業者が就いていた仕事に、今では大学卒業者が押し寄せている。通常の事務職員から始まり、タクシーの運転手、守衛さん、宅急便の配達までもが大学卒の高等教育が必要なのだろうか。学習しても社会で役立つかどうかわからない高等教育。一般社会も、大学卒業の学歴だけを求めているようだ。これでは、せっかくの高等教育も無駄になってしまう。しっかり勉強して自分自身にも、投資してくれた家族や国民にとって無駄な投資にならないように頑張ろうではないか。 大学4年間は、労働可能な40年の10%に達する。過剰投資が日本経済の沈滞や若者の勉学意欲を低下させ、目標を見失う結果になっている可能性もあるので注意。

29. はた迷惑?------

私は、何事でもやる気になるとトコトンやってしまう体質で、時には同世代、同業者、などの私の近くの人には極めて迷惑な存在かな、と思うこともあります。先日、弊社の展示会場での事です。普通は「すごいですね、良いですね」と褒めて頂くことが多いですが、ある人から「ヒヤヒヤしている会社もあるでしょうね」と言われて、さすがにグサリときました。 大学の研究でも会社の事業でも、大きなテーマほど多くの人が一番乗りを目指すので必ず競争相手があります。フェアーに競争をするのであれば、それが科学進歩の原動力なのですから競争を避けるわけには行きませんが、確かに、はた迷惑な場合もあるかもしれません。

30. セールス不用-----

弊社では独自の商品(100種類の試薬のうち、過半数は世界初商品)と技術があるため、セールスには全く出かけません。試薬会社に卸していますがいつも弊社まできていただき、本当に申し訳なく思っています。新規商品の場合、ユーザーである薬品会社、大学等の研究者は既存試薬会社の試薬リストに希望する試薬が無い事がわかると、インターネットで探されるようで、弊社への直接の問い合わせが多くなっています。弊社では試薬の他に、受託精製、受託合成、受託研究等の受託業務が次第に多くなっています。少人数のベンチャー企業にとって、セールス不要は非常に助かります。

31. 教育バブルの崩壊-

戦前(60年以上前)には大学教育はわずか数%であった。私の頃(昭和39年高校卒)の高校卒業者は約50%、大学進学率は約10%であった。現在は50%を超える大学進学率であるが、大学卒業者の就職先は以前の高校卒業者のそれと殆ど変わらない。これは当然のことで、社会的に要請される職業は時代が移っても殆ど変わらず、40年前の高校卒業者と現在の大学卒業者は共に50%なのだから。 大学教育は本当に50%の人に必要なのだろうか。私はその必要は無いように思う。その理由として以下の3点がある。
(1)それほどの専門性が求められていない。
(2)大学側、学生共にエリート意識が低い。
(3)1年以上延々と続く就職活動による教育阻害。
教育バブルの結果、生涯労働期間は10%以上短縮され、かつ労働意欲の減退をもたらした。これが日本経済没落の一因ではなかろうか。

32. 会社の信用、実力--

これまで、企業の格は資本金、創業年月、社員数、立派な社屋の有無、等の尺度で測られてきた。弊社の場合には、世界初商品が多い事もあってユーザーには試薬の純度(HPLCデータ等で証明できる)だけで信用していただけて助かります。また、試薬の単価が高いこともあって、数gの生産には巨大工場は不要です。お金も、設備も、人も、時間も、出来るだけかけずに不可能を可能にする。ハイテク企業の醍醐味です。

33. 好きに生きる------

学生のご両親がよく「大学での勉学生活が必ずしも将来の仕事に結びつかなくても良い。子供の好きなようにさせたい」と言われる。しかし、小学生から大学生まで、人生経験が少ない子供に適切な判断が出来るわけが無い。  「好きにしてよい」と言われた子供は、アルバイト、遊び、恋愛ごっこと楽しい日々に明け暮れる。卒業間際になって、「人生の目標が見えない、好きな仕事が見つからない、働きたくない」となる。子供を「自分の好きなようにする、わがままな体質」に育てた責任は親にある。  40才近くなってもフリーターで年収100万円前後しかなく、やむを得ず仕送りを続けているご両親があると聞いている。個人的にはお気の毒としか言いようがないが、高校卒業後20年も仕送りを続けられたのだから、ついでにあと20年で60歳の定年になると計算してしまうのは他人事だからだろうか。

34. 親と子供----------

子供は、高校を卒業して20歳近くなると、身体、精神共に一人前になったと思っている事が多い。しかし、近頃では30歳を過ぎても親世代から独立していない事が多い。親世代からすると、20歳で成人・独立して欲しいものの、30歳、40歳になっても子供の特権を手放さない人が多いのは問題だ。経済的、精神的に両親と同等以上に成長して社会に役立つようになって初めて成人したと言える。遅くとも、両親が定年を迎えるころには独り立ちして欲しいものです。

35. 職業と生き甲斐----

何らかの社会貢献をする事によって生きる糧(かて)を得る、それが職業である。道路工事、ビルの掃除、コンビニのレジ、工場での生産、セールス、事務、教育、研究などの多彩な職種がある。それぞれが重要な仕事であるが、その中で自分に合ったものが良いのは当然である。好きな仕事を職業にできれば、恵まれた人生を送る事ができ幸せになる事は間違いない。なぜなら一日の大半の時間を仕事にかけるのだから。 しかし、自分が好きでも、社会がその人を求めて職場を提供してくれなければ職業とはならない。自分が好きなだけでは趣味、遊びに過ぎず、それを一般社会では道楽(どうらく)と言う。お金を払って遊ぶ時の楽しさを仕事に求めてしまう人が多いが、遊び(消費)と職業(生活費確保)を混同してはいけない。職務を果たした達成感や家族の生活費を稼いだという満足感、存在感があれば充分である。おまけとして、少しでも自分らしさを生かして社会に貢献し、その代償として生活費を獲得して次の世代を育てる事ができれば、この世に生れて来た甲斐があったと感じることができるのではなかろうか。

36. 学生の品質保証----

国立大学は今年(平成16年)、独立行政法人となり教育・研究経費は大幅にカットされつつある。私の研究室では博士、修士の大学院生と学部4年生等と教員2名の合計十数名が所属しているが、大学配分の年間経費はわずか200万円弱で、これに何がしかの外部資金を導入して研究室を運営している。  学内外の競争的資金の配分が正当な実績評価のもとにきちんと成されるなら良いが、わずかの資金確保のための人脈作り、管理職の争奪戦などのために教員は右往左往し、本業どころではない。  大学院生、学生などは各研究室にほぼ同程度が分属している現状にある。競争的研究費の名の下に大型研究費がバラ撒かれているが、同規模の近隣研究室の年間予算が数十倍も違うと、むしろ弊害のほうが大きいのは明らかである。仮にノーベル賞を受賞された先生でも、急に数十倍、1億円前後の研究費を使うのは大変で、一般社会では通用しない贅沢な研究者が育つことになる。著名な先生方も、30年前の若かりし頃にその研究費、権限、評価を欲しかったのではなかろうか。  大学の本務が学生、大学院生の教育・研究指導である以上、唯一の商品である卒業生に、各大学の格調を保つべき品質保証をする必要がある。教員一人300万円程度の研究費を均等配分して最低限を保証すべきであろう。幸い、私の研究室では長良サイエンスのお陰で研究費を確保できた。卒業生の一部には就職先も補償でき、研究に専念できる。

.37. 評価の難しさ-----

文科省の科研費、通産省の産業活性化経費等の研究費の評価はきわめて難しい。
 ベンチャー関係でも多くの研究費が審査、支給されているが、実際に産業として創業されたケースは稀で、数%以下であろう。だとすると、95%以上は現実に経済効果が無かった事になり、大半は無駄な投資になっている。この無駄な投資のために、僅かな可能性についてもっともらしく要求した申請者と慎重に審査した係官の努力は何なのだろう。せめて投資効率50%以上でなければ血税の無駄使いとなる。

38. ベンチャー創出1000社------

個人がその能力、アイデア等に賭けて出資し、成功を夢見て必死で努力する、それがベンチャーの良さである。出資は大手企業を頼り、研究費は国に頼り、努力は他人に期待する、それではベンチャーとは言えない。  事業成功の可能性も無く、とりあえず補助金を求めて創業し、正社員不在で商品も無い幽霊企業を沢山創ってもわが国の産業活性化はできない。

39. 私が政治家なら-----

(1)予算関係:国家、地方予算の50%削減(収入の範囲が原則)
1.公務員を半減、大半を契約社員に。
2.事務手続きの簡素化
 (税務、公文書等を素人に出来る程度にする)
3.血税の無駄遣いをしない。
(2)雇用関係
1.正社員増:一人100万円補助
 正社員減:一人100万円罰金
2.雇用保険:中止 ⇒ 自己責任
  解雇の場合には会社負担で給与の60%を半年保障。
3.各種年金:中止 ⇒ 自己責任、貯蓄増
4.健康保険:中止 ⇒ 自己責任、多額の場合のみ保証
(3)教育関係
1.進学率の抑制:高校進学率50%
        大学進学率20%
        大学院5%
             教育投資の削減、若年労働者の確保、勤労
        勉学意欲の回復、教員の削減
2.格差の是正:大学間格差、研究室格差は50%以内
           予算の削減、教育水準の保障、審査の簡素化
3.就職活動(新卒)は1〜3月に制限。採用、応募の経費削減。教育の充実。

40. 失業率急増---------

中高年のリストラ、就職浪人と失業者が急増している。これは明らかに労働力の需給バランスが崩れていることを意味している。リストラされなかった人も猶予されているだけ? 安心して働ける社会体制の構築が急務である。

41. 新卒の就職難-------

このところ就職浪人が目立つ。これは初任給高騰の結果ではなかろうか。 せっかく就職しても僅か3年で3〜5割が辞める様では人並な給与を払えない。3年程度の仮採用期間を設けることが必要ではないか? 弊社でも30歳代の中途採用で優秀な研究者を採用した。やる気のある人にはチャンス!!

42. 残業権-------------

残業には割増賃金を支払うのだから、弊社では全員にはその権利を与えないのが原則。入社後の働きに応じて時間制限付の残業する権利を与えています。 弊社では、取締役(オーナー)以外の役職者には残業手当を支給しています。しっかり稼いでください。

43. 大企業-------------

仕事の関係で関連企業の様子を垣間見ると、大企業ほど決断に時間を掛けている事がわかる。テーマの選択から始まり契約までに半年近く、納品後の品質検査、入金までにはさらに半年かかる。その間には多くの会議があるようで、なんとも悠長なことである。 その点、弊社では数百万円の契約でも即決する。この点だけ見ても大企業に負けるとは思えない。有難いことです。

44. 合議制-------------

大学、企業を問わず、会議が多すぎる。事情のわからない人まで会議出席を義務付けられる。役職者は責任の重さ故に厚遇されるのだから、責任を持って自分で決済すればこのような無駄を省けるのではないか。 会議の多さは、その組織の無責任体制の表れとも言える。 弊社には、数十万円程度のことを決済できない課長、部長は要らない!

45. 仕事の楽しさ-------

所属研究室の卒業生は、それぞれ、薬品、食品会社などで活躍して相当な役職についている人も多いが、その研究内容について満足している人は意外と少ないように思う。例えば、薬品会社では新規大型商品1つの開発に100億円以上かかり、500人規模の研究所で10年にひとつ、新規化合物一万個に一つがモノになるかどうかだと聞いている。これでは研究者は歯車の一つで、楽しく研究できるとは思えない。独自の研究で個性を生かして世界に挑戦する、弊社はそんな会社でありたいものです。

46. 世界一の給与-------

弊社の目標は「世界で最も高額給与の会社」です。勿論、世界一儲かる会社になってからになりますが、十分達成できると思っています。社員全員でがんばって世界一の高給を手にしよう。研究者バンザイ!

47. 趣味の研究、プロの研究------

その違いは、誰が目標を設定するかにある。企業では組織としての目標設定がなされ、それによって会社の格調が決まる。企業では利益の追求、企業間の競争が主要因となり、他社をリードできれば目的はひとまず達成される。儲ける事を目的とする企業の弱点でもある。 一方、個人の趣味で研究する場合には利益の追求や他社との競争は主要因でないことが多く、そのためにその目標設定は完全に本人に任される。その結果、通常はプロの場合と比較するとレベルが低くなる。しかし、他者との比較もせずに、本人が納得できるまで夢を求めて黙々と研究を続け、あるとき気付くと他を完全にリードしていたと言う例も結構ある。絵画、音楽、小説などの芸術がその例で、自然科学も本来その範疇にあるものではないか。 趣味の研究で研究を楽しみながら世界を制す、のが弊社の目標である。

48. 難しい研究---------

要するに、どうすればよいのか判っていない未知の状態を言います。 3000メートル以上の山に歩いて登るには、それなりの知識、経験、装備、体力が必要ですが、山頂までロープウェイが出来ればハイヒールでも15分程度で上れます。自然科学の研究もよく似ていて、先日まで難しかった事でもよい方法が見つかってしまえば極めて簡単になり、中学生でも遺伝子操作を出来るそうです。 研究の醍醐味は、不可能を可能にする、他社にはできないことを簡単にやってのける事です。誰かが見つけた良い方法を真似するだけなら誰にでも出来ます。もしもそんなよい方法があるのなら、それを見つけた人の苦労や、それが発見、開発された背景をよく知って感謝の気持ちを持って使わせてもらいましょう。そうでなければ、単なる作業員になってしまいます。

49. 天然物化学---------

人を含む動物、植物、細菌等の生き物が作る生体成分の中で、DNA,たんぱく質などを除く、分子量数千までの物質を扱う学問分野です。複雑な混合物から望む物質だけを純粋に取り出し、その化学構造や活性発現機構を解明し、さらには人工的に化学合成する、まるで魔法使いのような専門分野で、薬品、食品、化学等の極めて広い産業に深く関係しています。これだけ広い領域と深く関係する研究分野を専門とすれば、社会で活躍できること間違いなし。

50. ノーベル賞---------

このところ日本人にノーベル賞受賞が連続し、すばらしいことです。研究者のみんなが憧れるノーベル賞。いつの間にか初老の域に達してしまった私にとっては、60歳を過ぎてから一念発起してノーベル賞を受賞した、という例が出て欲しい。

51. 大成功したら-------

もしも、この会社で大成功したら、私は長良賞を創設したい。 その賞では世界で最も楽しみながら研究した人を称えたい。 この社長の一言も、一言のつもりがある時は「小言」、「戯言(たわごと)」になってしまいましたが、これで50項目にもなりました。思いがけない人から「このところ増えていませんね」とか、「楽しみにしています」とか言って頂きます。また、先日は雑誌の取材にまで来られて驚いています。  もともと、この変動の時期を迎えて長年生きてきた経験、特に若者にはない考え方を伝えたくて書き出したので、かなり激しい内容になっているかと思いますが、その点はご容赦ください。ご意見や反論をいただけると幸いです(2004.07.14 中塚進一)。  検索エンジンで「社長の一言」を引くとYahoo! では627万件中のトップに、DIONでは25番目に、MSNでは29番目にでてきますので、かなりの人に読んでいただいているようです。(2006.10)

2005年〜

続:社 長 の 一 言
長良サイエンス(株) 代表取締役社長
(岐阜大学教授の研究成果活用兼業)
中 塚 進 一

社長は国立大学教官初の社長兼業。名古屋大学大学院博士課程卒、ハーバード大学博士研究員、名古屋大学農学部教官を経て現職。自称、「世界で一番研究を楽しんでいる。研究は趣味、実益、道楽のすべてを叶えてくれる」
 「社長の一言」として2003-2004年版No.1-51を記して2年になる。1年近く休んでいたが、この「社長の一言」についての2件の取材があり、また、何人かの知人からの励ましの言葉があったので、気を良くしてもうしばらく続けて見ようと思う。                 2005年6月                   

52.まじめな日本人はどこへ。

小原庄助さんの、「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで,それで身上潰した(しんしょう:財産を無くした)」との一節を、「モットモダ」とみんなで納得したのは20年前(1980年頃)までだろう。今ではそのくらいは日常茶飯事で、「それは本人の勝手でしょ」、とか、「その程度では潰れない位の財産が欲しい」との声が聞こえてきそうなこの頃である。真面目にこつこつと努力することが信条であった日本人はどこに行ってしまったのだろうか。

53.職業:「したい仕事が見つからない」という病気。

「したい事」と言っても、映画を見る、小説を読む、買い物をする、旅行をする---などの場合には、対価を払って消費する事で、今では誰でも好きにできる。お金を払って楽しくなければ、どこかおかしい。問題は、それを職業にしたい、すなわち、収入を得て生活の糧にしたいという場合である。自分がしたいと思っても、その労働を評価して「十分な対価を提供してくれる相手」がなければ職業にならない。自分の都合を少し我慢して、「他人から評価してもらえる自分になること」に眼を向けよう。

54.自分の評価、他人の評価

「自分の評価は甘くなり、他人には辛くなる」というのが普通だ。自分を一番理解して、最後まで好意的に見つめてくれるのは本人自身なのだから、自分のことは決して見捨てず、最も大事に、優しくしなくてはならない。しかし一方では、他人が自分を評価するときにはそんなに甘くない、という現実がある事も忘れずに---。

55.厳しくできない親の責任

さほどの苦労も無く定年まで勤め上げた親世代と、何の不自由も無く育った若者世代。人間が誕生して以来の300万年〔一世代を30年とすると10万世代〕の中で、もっとも幸せで豊かな30年間〔1980年代〜2000年代〕を経験してきた70歳以下の日本人は、いまや、もっとも 1)将来を楽しみに努力する事の大切さ。2)社会を構成する各世代間共通の(生まれてから100歳まで通用する)価値観、生きがい。3)1,2を次の世代に伝える努力。などを忘れて、刹那的に生きている感がある。日本が世界の経済大国になったのは明らかに「他国に秀でた国民であった」ことは明らかである。先祖から引き継いだ貴重な財産を確実に次の世代に引き継ぐ事が、現役世代の使命である。我々には子供世代を放任することなく、きちんと教育する使命がある。「人として、社会としてのあるべき姿」を教えよう。

56.食生活と健康

1950年代までの日本では、穀物、野菜を中心とした菜食で、もっぱら総エネルギー確保を目標とした食生活であった。その後、十分な食料を確保できるにつれて肉、脂などの高栄養素材を中心とした欧米風のおいしい食事が中心となった。この間に、おいしくする技術(化学調味料、フレーバー、色素、保存料など)が発達した結果、おいしいものを容易に食べられることになったが、本来の〔美味しいもの = 栄養価、バランスが良く体に良いもの〕という関係が〔美味しく見せかけてあるが、栄養的には全く意味がないことにお金をかける〕という〔見せ掛けの科学〕へと変化してきた。何を食べるかは個人の自由であろうが、(1)肉主食で野菜を殆ど食べない、(2)カリントウの大袋、菓子パンやケーキが食事代わり、といった乱れた食生活と、それが関係していると思われる慢性的体調不良などによる遅刻、欠勤となると他人ごとではすまない。若者の将来が心配である。

57.ベンチャー創業の勧め

研究の実力があれば、間違いなく起業は成功します。実業界は実に実力主義で、よい商品があれば評価される。おまけに大学の活性化〔大学生等の構成員の意識の高揚、研究費の補填、研究材料、研究ノウハウの供給、就職先の確保など〕に役立ちます。予想外だったのは、自分自身の定年後の目標ができたことである。  100歳を超えた「きんさん、ぎんさん」は、当時のテレビ出演費用を、老後のために貯金されたとか、さすがです。私はこの調子だといつまででも研究できそうなので、とりあえず最上階には〔金華山が見える私専用の実験室〕がある丈夫な自社ビルを建てなければ---。

58.研究レベル向上や努力の必要性

   研究のレベルや努力が必要だといっても、経験が少ない若者にはその内容を理解し難い。そこで、具体的にその例を説明する。お茶は日本の代表的な嗜好食品で、新茶の高級品は100gで数千円〜数万円と高価であるが、これは年に1回しか採れず、光を制限して栽培するなどの多大な手間、特殊技術、製茶法、品種などによって高価になっているのであって、茶葉自身はかなり安く(kg単価千円以下〕生産できるようである。従って、緑茶の場合でも100倍以上の価格差があり、これが技術レベルや努力の違いである。    次に茶葉中の主要なポリフェノール・カテキン類関連商品の市場価格について説明すると。       カテキン関連商品              商品価格   用途〔発売企業〕
   1.乾燥茶葉〔カテキン混合物含量10〜15%〕   1kg  約千円 食品用〔食品会社〕
   2.茶葉熱湯抽出物〔カテキン混物含量約30%〕  1kg 約5千円 食品用〔食品会社〕
   3.粗製カテキン〔カテキン混合物含量60%〕 1kg 約5万円 健康食品〔食品会社〕
   4.EGCg等の単一成分〔純度98%以上の試薬〕  10mg 数万円 研究用試薬〔弊社〕
   5.微量成分の単一標準品〔純度98%以上〕  1mg 数万円 研究用試薬〔弊社〕
  弊社では食品会社が製造している安価な1〜3を購入して高価な試薬4,5を製造している。すなわち、わずか数万円の原料から数億円の商品を生み出すのが弊社の仕事で、ハイテク産業そのものである。ちなみに高価なものの代表のように思われている金は1g1500円程度である。つまり、弊社の試薬1gは、金1kg(150万円)よりも高価なのだ。 食品と試薬ではその価格比は軽く100万倍を超える。これらの試薬を世界に先駆けて生産し、世界を制するのが弊社の目標である。実際、技術さえあれば1千万円以上の商品をわずか数日で作り出すこともできる。振り返って考えると、われわれ研究者はその夢をかなえるために、小さい頃から大学、大学院を経て日々遅くまで努力しているのだから、イチロー、松井のホームラン以上の価値を数日で生み出せて当然なのです。ちなみに、1,2,3の商品を生産しているのは世界で数十社、10種類以上を生産しているのは弊社を含む2社のみ。長良サイエンス〔株〕では34種類のカテキン類を生産し、その大半は世界初商品なのだ。 日々の研究レベルの向上と、弛まぬ努力とが欠かせないことをお分かりいただいた事と思う。もちろんその結果、現在5人の研究員が、5年後に50人になるとすれば、現在の研究員は平均9人の部下を持つことになる計算だ。弊社には頑張らない人はいない。 研究を楽しみながら世界を制す 長良サイエンス〔株〕

59.感動の一瞬

難しい知恵の輪を外すのに、30分で90%の人が諦めるとすると、1時間頑張る人は1%程度で、5時間も頑張る人は0.1%程度で、1000人に一人くらいでしょうか。それだけ少なくなると、頑張れるだけでも価値があります。それだけ頑張り続けるには、あれこれ工夫してみるアイデアの継続性、根気、見通し、自信などが必要ですが、苦しんだ後で解けるとその喜びは大きい。    私がハーバード大に留学していた頃(1972−3年)に、半年以上できなくて苦しんだ反応があった。今から思うとなんでもないカルボニル基の還元反応だったが、ついには岸先生から「もうこの反応は止めよう」と言われてしまったもののあきらめ切れず、深夜になってから実験していた。念のためにと、ついでに試みた反応が大当たりして、念願の還元反応がきれいに進んだのだ。夜明けまでかけて実験データをそろえたが、UVセルを持つ手が震えていたのを今でも思い出す。初めての経験だった。    何かと晩生の私は、その頃まで(博士課程2年)まともな研究成果を出せなくて先生にはずいぶんご迷惑をおかけしていた。朝になるのを待って、岸先生に結果を報告すると、いつもの厳しい先生が「この反応は止めたはずだ」と言いながら、顔は満足そうに微笑んでおられた。「ひょっとしたら研究者として食べて行けるかもしれない」、と思った瞬間であった。

60.事業の心得(原価計算をする?)

今から10年ほど前になるが、その頃、岐阜大学農学部で弊社創立のきっかけになった、クロマトグラフィー用のシリカゲルを分級(粒揃え)し、HPLCカラムに充填して使用し始めた頃だった。以前から親しくしていただいていたクロマト関係のN化学(株)社長にシリカゲルの分級度の測定をお願いしていたところ、そのデータを岐阜大学の研究室までお持ちいただいた。職人気質の社長の言葉「こんなに良く揃ったゲルができた時はさぞかし嬉しかったでしょうね」。専門家からそんな言葉を聞くとつい嬉しくなるものです。お互いの苦労話をした後で、つい、「充填カラムの原価はどの程度ですか」と聞いてしまった。N社長は「原価を計算するものではありません。代金は、これまでの研究成果への報酬と、次の研究開発費なのです」と諭すように話されるのを、恥ずかしさのあまりに小さくなってお聞きした次第です。実業界は、大学以上に実力次第と思い知らされました。 今年(2005年)N社の新社屋が建ち、8月に見せていただきました。数年ぶりにお会いした社長はますますお元気で、色々お話できて楽しいひと時を過ごしました。 N社長は私の師匠の一人です(片思いですが)。お元気でご活躍ください。

61.弊社の経済効果

1999年の創業以来はや8年目、役員を含めると総勢10人が試薬、受託精製などに取り組み、2006年6月末には2005年度の総売上約5600万円と年率20%増で順調に伸びている。原価は数%程度で、殆どが人件費、設備費等で、この売上げは通常の商売の場合の粗利益に相当し、十分10人の生活費を賄えて黒字である。    また、弊社が作る試薬は試薬会社、その販売店を経て各大学、企業の研究者に販売されるが、その末端価格は弊社卸売価格の2〜5倍となっている。弊社商品の殆どが世界初の独自商品であることを考えると、弊社が生産する試薬の経済効果は2〜3億円で、その何割かは外国向けで外貨の獲得にも貢献している。

62.大学発ベンチャーの経済効果

大学発ベンチャーが1500社になったとか。しかし、1)創業に大学の研究成果が必須であったか、2)既存企業の子会社ではないか、3)自社商品があるか、などを厳密に調査すると、殆どの大学発ベンチャーは怪しい部類となろう。資本金何十億円の大手企業発の「大学発ベンチャー」は、親会社からの毎年数十億円の研究費負担によって支えられている。上場された「大学発ベンチャー」は新規商品がなくても1000億円近い総額と評価されている。しかし、これらは自社商品がないために、もしも親会社からの研究費負担が途絶えると、大学側の意思とは無関係に即座に破綻(倒産)する。まだ商品がない企業が資本金の10倍以上もの株価で売買されている現状は明らかにバブルである。大学発ベンチャーの過大な広告は避けるべきであろうし、日本経済の中で、唯一の期待の星・大学発ベンチャーへの期待を裏切ってはいけない。

63.学生、その父母と教員の会話

仕事柄、学生気質や学生の家族関係などを観察していると、残念ながら日本の先行き不安を感じてしまう。親子関係を初めとした家族間の会話、特に人生観、価値観などの世代継承が極めて困難となってきている。悪く言えば、「勉強していれば(あるいは、している振りをすれば)あとは何でも善いと言わんばかりの無責任な教育」がまかり通った戦後の60年、現在の日本社会は瀕死の重症と言わざるを得ない。例えば、学生、その両親と教員の会話の例は以下の通り。
例1 学生の両親: リストラに遭って収入が半減した。30歳超の長男は定職に就かず、年収100万円程度のアルバイトで仕送りが必要、しかもお世話になっている4年生の長女は派手な生活でかなりの生活費がかかっている。もっと親の事情を理解して質素に生活するように教育して欲しい。
教   員: 指導教員に頼むことではないでしょう。家族で話し合ってください。
例2 学生の両親: 子供が修士課程に入りましたが、我が家では「専門を生かす必要は無いので好きなようにしなさいと教育しています。子供が好きなようにさせてください。
    教   員: 専門家を育てるために国の予算を使い、その教育には多大な努力をしているのだから、社会に還元できる優秀な研究者になって欲しいですね。大学はディズニーランドとは違うのです。
           ちなみに、優秀な大学教員や研究者にしてくださいと依頼された事は少ない。
  例3  学   生: 週1〜2日の実験で卒業できる研究室が多いのでそうして欲しい。
      教   員: 高額の授業料を払ったのだから元を取って卒業しようよ。
  例4  学   生: 1週間程前に再結晶してから何も研究が進んでいない。
      教   員: それは私がやって見せた再結晶でしょう! ろ過もしていないの? 
     例5  学   生: 卒論(あるいは修士論文研究)が終わったら、ぶらぶらして居たい。土地資産があるので働かなくてもよさそうです。
教   員: うらやましい。兄弟一人当たりで3億円もあれば一生食べてゆけそうだね。
でも、働くことを知らない子供ができると、その分が足りないよ!
  例6 学生の両親: うちの子は小学校当時から同級生とは遊ばず、2〜3級上の子供と遊んでいた。
その頃から家族や担任の先生では子供に太刀打ちできず、日頃の生活はもちろん、進路などを全て自分で決めてきた。好きにさせるしかありません。
     教  員: 「小学生が的確に判断できるのなら、家族も先生も要りませんね。それでは単に放任されただけで子供がかわいそうです。」と言いたかったが言えなかった。
           その結果は、4年制の専門学部と修士課程を稀に見る優秀な成績で卒業して、今では、専門を生かしたアルバイトで頑張っているようです。 

64.会議を楽しむ

若かりし頃、会議は楽しいものと思っていた。当時は、数人の長老格の方が中心となって、会議の議題に沿って事の良し悪し、集団としてのあるべき姿などを議論されるのを聞いて、各自の見識を深めるのが普通であった。従って、若者が発言することは少なかったが、皆さんの意見を聞きながら、賢い人、わがままな人、まとめるのが上手な人、などと構成メンバーの品定めをしつつ会議の成り行きを見守ると「5年、10年後には、あの人がリーダーになってゆくだろう」などと、結構楽しみながら年配の皆さんの会話を楽しむことができた。学会の後の懇親会でも、長老の先生方の ご意見は誠に味わいがあって、それをお聞きするだけでも会に出席する価値があると思ったものです。残念ながらこの20年くらいは、そんな古きよき時代の会は少なくなってしまい、殆ど議論を避けてあらかじめの多数派工作で結論は決まっているようだ。興味を持てない、形だけの会議に終わることが多く、議論は殆どしないで結論は委員長任せ。その結果、「万博会場に弁当や飲み物を持参できない」といった不可解な結論が出てしまう事になる。多くの偉い人が出席された会議では、いったい何が議論されたのだろうか。形式ばかりの苦痛な会議は止めて欲しいものです。

65.最近のあいさつ

最近、メールなどで「お疲れさまです」の言葉をよく見聞きする。還暦が近い私は、「それほど疲れていないのに---」と思いながらも、さぞかし疲れて見えるのだろうと気になって若い知人宛のメールを見ると同じ書き出しなので、やっと、これが流行り言葉であることに気づき一安心。暗い世の中ですから、せめて挨拶くらいは明るく! 私がお世話になっている先生からは、いつも「ヤッホー!」からメールが始まります。これをいただいた日には、今日は1日、良いことがあるぞ! と思ってしまいます。参考まで。

66.素晴らしい仕事ができると

苦労してきた人は (1)感動する。(2)報われる。(3)次の苦労に挑戦する元気が出る。
  苦労しないでできた人は (1)喜べない。(2)自分の能力を過信する。(3)次には必ず苦戦する。
  成果をもらった人は (1)当然と思う。(2)次回も欲しくなる。(3)次の世代が苦労する。

67.大学発ベンチャーが1500社を超えたとか。

そのせいか、ようやく「数ばかりでなく質が大事」と言われるようになった。わが社は、この2006年6月末で第7期決算を迎え、総売り上げ約5600万円、若干ではあるが3期連続黒字を達成した。自力経営で社員と共に楽しみつつ急成長している現状に大満足である。社員の皆さんと共に、研究世界のイチロー、松井を目指して頑張っている。

68.海外進出

薬品、試薬等の分野では日本は後進国で、世界のシェアーは5%程度であろうか。従って国内市場は小さく、130種類の試薬(大半は世界初商品)を作っても年間売り上げは限られている。しかし、もし海外進出できれば、一気に10~20倍の売上げを期待できるのは確実。頑張るしかない。

69.私の目標

博士号を取得して海外の有名大学に留学した、余りにも『カッコ良すぎる』自分の経歴に驚くばかりだ。私の場合には、たまたま名古屋大学の大学院修士、博士課程で師事したあのふぐ毒等で超有名な岸義人先生がハーバード大学の客員教授(1972-3年)、教授(1974年−現在に至る)として活躍されたお陰で、そのおこぼれに預かり、1972−76年にかけて約3年間ハーバード大学の研究員として勤務させていただいた。当時のハーバード大学化学部(Department of Chemistry)コナント棟1階の私の実験室のすぐ向かいには1964年のノーベル賞(生理・医学)を受賞されたブロック先生の居室があり、すぐ隣の研究室は1965年ノーベル化学賞のウッドワード先生、その地下の階は、後の1990年ノーベル化学賞のE.J.コーリー先生の研究室で、私が留学する数年前には野依良治先生(2001年ノーベル化学賞)が留学されていた。    私もノーベル賞を目指して60歳にして一念発起! と言いたいところであるが、ちょっと苦しいのが実情である。せめて、「一流を目指している」と思いたくてあえいでいる毎日である。

70.アルバイト (1)

大学進学率が50%以上になった今日、どこの家庭でも教育費の増大に苦しみ、一方、大学に入学した若者はここぞとばかりに自由を楽しんでいる。経済的余裕がない親世代は、留年した子供に、責任はお前にあるのだからと、授業料、生活費の自己責任を要求する。年間授業料60万円と生活費100万円の総額160万円以上を捻出するとなると、ほぼフルタイムのアルバイトとなり、勉学どころではなくなっている。ましてや優雅な消費生活を覚えてしまうと留年を繰り返してしまう結果となる。 私の概算では、留年などで卒業が1年遅れると約1500万円、2年で3000万円の損失となる。3000万円と言えば、サラリーマン家庭が新築住宅を購入する金額であり、二人の子供を成人するまで育て上げる金額に匹敵する。2年遅れると、これらを諦めざるを得ないぐらいシビアーな現実になる。

71.アルバイト (2)

3〜4年留年した真面目な学生: 一生の仕事としてふさわしい仕事を探していろいろ経験してみた
がどれも納得できなかった。どうすれば自分に向いた仕事が見つかるのでしょう。 
指導教員: アルバイトは誰でもすぐにできる仕事で、時給800円の世界。1年続けても時給は50円増し程度が普通で、その仕事に生き甲斐を求めても無理でしょう。
通常の正規社員の時給はその2倍から始まって、経験、実力でその何倍にもなるのが普通で、それだけ遣り甲斐もあるのです。超優良企業の平均年俸は1000万円以上なのです。
       有名な野球選手はホームラン1発で数千万円とか。私たち研究者も、1回の実験で何千万円かを生み出すのを夢見て日々努力しているのです。

72.「大学発ベンチャー創業と大学」という授業

2006年から岐阜大学で「大学発ベンチャー創業と大学」についての授業(週1回で半年15回)を担当している。これは本務としての授業ですが、自慢話をして義務を果たせるとは最高の幸せです。これで岐阜大学の学生諸君がやる気になってくれると良いのですが−−−。

73.博士浪人

最近は就職できない博士、すなわちオーバードクター(博士浪人)が多くなって問題になっている。以前は、卒業年限を過ぎても博士論文の内容が調わず、学位取得が延びる例が多かったが、このところは学位が取れても就職が決まらない人が多い。もちろん、それなりの実力がついて個性や専門を生かした仕事で活躍できれば、博士取得までの投資効果は十分あるが、実力が無ければ役に立つわけも無い。大学卒業後博士取得までには最低でも5年かかるが、外国に留学して30〜35歳となっても定職に就けない人が増えている。大学卒業後の10年といえば、生涯就労期間38年(大卒22歳〜60歳)の25%に相当する(生涯賃金を3億円と計算しても、その25%は8千万円近い)。 安易に博士課程に進学して気楽な学生生活を楽しんだ本人と、それを勧めた教員に責任があることは明らかだが、急激な大学院進学率の上昇は、国家、家族の無駄遣いになることもあるので注意。幸い、私の研究室の卒業生には職のない人はいないようで、20人前後の博士が各方面で活躍中。

74.「個性豊か」は良いこと?

この60年間、欧米風の個性を大事にする習慣が身についてきた。しかし、その個性が周辺の人から見て【プラス要因】なら社会貢献だが、本人だけの自己満足にとどまるのなら単なる趣味 或いは 悪趣味に過ぎない。生活費を獲得する為の仕事をする以上は、所属する集団(会社、グループなど)にとって【プラス要因】でなければ存在価値が無いのは明らか。

75.還暦

先日、満60歳を迎えた私は、できるだけその話題に触れないようにしている。私は日頃、何かと遣り残したことが多いと感じていて、お世話になった先生方の還暦祝にも出席を避けてきた。幸い食糧事情に恵まれ、60歳ではまだ当分は引退する気になれず、ましてや私の場合には5年前にこのベンチャー・長良サイエンス(株)を始めたばかりでもある。 1日も早く、この会社を軌道に乗せて社員8人の将来不安を解消しなければならないし、次には岐阜大学研究室の研究費を補填して、大きく飛躍させねばなるまい。このささやかなる夢を実現できるまで、還暦祝いは当分の間(70歳まで?)おあずけですね。

76.安藤百福賞にバンザイ !!

私の60歳の誕生日(戸籍上は昭和21年1月3日生)の2週間前にすばらしいクリスマスプレゼントを受け取りました。安藤百福賞なのです!! さしたる研究業績もなく、ただただ、こつこつと頑張ってきた私にとっては、このような身に余る賞をいただけることになり、まさしく感激の一瞬でした。

(財)食創会 平成17年度 安藤百福賞 ベンチャー部門優秀賞(賞金200万円)
表彰式は平成18年2月27日、ホテルニューオータニ東京
 * 安藤百福氏:日清食品(株)創業者会長;インスタントラーメンの開発者

実は、私は以前からチキンラーメンのファンで、研究室にはチキンラーメンが用意してあります。10年ほど前に博士課程を卒業した平野 哲君が日清食品(株)の研究所にいて、よく日清食品の麺類の差し入れをしてくれますが、チキンラーメンは必ず入っているという次第です。
終戦の年に生まれた私達にとっては、まさしくインスタントラーメンを食べつつ高度成長を支えてきた世代で、受賞の感激もひとしおです。
受賞したら、早速賞金の200万円を岐阜大学研究室の研究費に寄付させていただき、大学の活性化に役立てるつもりです。もともと、このベンチャー創業は大学の活性化も目的でした。来春からは[大学発ベンチャー]なる講義を担当することになっていて、この賞金や、長良サイエンスからの奨学寄附金などで岐阜大学を活性化したい。1990年のバブル崩壊の年に岐阜大学に赴任して以来、15年もかかってしまったが、これでやっと研究費などの研究条件確保ができた。お陰さまで、65歳まで定年延長になり、岐阜大学での研究はまだ5年残っているのでまだ十分研究を楽しむことができそうだ。とりあえず、第1段階は確保したので、あとは第2段階に向けて驀進するのみ。
ところで、先日、田舎のスーパーで見たチキンラーメンは一個40円程度でした。賞金の200万円は5万個のチキンラーメンに相当するので、毎食、食べても40年以上、100歳まで食べられる計算である。まさしく身に余る光栄で、感激!!

77. 七転び八起き

私はよくつまずき、転ぶ。まさしく七転び八起きの人生で、膝の擦り傷が絶えない。さすがに最近では転び方が上手になった。転んだ勢いを利用してそのまま立ち上がるとエネルギーをほとんど損失する事が無く、生傷も少なくなった。転んだついでに手に何かをつかんで立ち上がれば、結果的には丸儲けとなる。

78. どちらが効率的?

聞くところによると、国の内外を問わず、著名な研究室では多額の研究費があって、新品の機械、器具に埋まって研究しているそうだ。実験に用いるフラスコ、試験管までもが使い捨てに近く、高価なNMR用の重溶媒が容器の洗浄に使われているそうである。豊かな研究室では学生でも10万円の物品までも注文するそうで、同じ大学でも研究室間の格差は50〜100倍にも達しているようだ。 当研究室では、ピペット(数百円)の先端が壊れるとガラス細工で修理し、小さなフラスコは手作りする。エバポレーター、HPLC等は20年以上現役。なぜか? 壊れた器具を捨てるにも手間がかかり、新たな器具を注文しても届くのに1週間以上かかる。自分で修理すれば数分で修理でき、必要な手間が最も少ない。おまけに、自分で修理したガラス器具は肉厚なので既製品よりもずっと長持ちする。お陰で100mlのメスシリンダーは60mlのメスシリンダーとなって20年経っても現役で活躍中である。 高速液体クロマト装置(HPLC)は200〜1,000万円の高額装置で、ちょっと機嫌を損ねると手がつけられない。専門の業者に修理を依頼すると数週間待たされた上に、出張費、修理費、部品費などで軽く10万円はかかる。機械が1〜2週間止まると仕事が進まず大損害。そこで、自分で修理すれば仕事が遅れず、しかも経費負担もない。かくして、当グループでは10〜20年選手の機器が現役で活躍している。 最近の高級機器は便利になったが、複雑で簡単には使えない。新規に購入して数年経過して、やっと使いこなせるようになった所で新品に買い換えてしまっては不便で仕方がない。お金があって次々と機器を新しくすると、かえって研究が進まなくなってしまうのだ。もっとも、一流研究室の優秀な人材がふんだんに研究費を使って研究されては、我々の様な並のグループでは太刀打ちできない。有名どころの優秀な研究者には(他人が開発した)新製品の性能でもゆっくり勉強してもらえば、その間に追いつくことができるというものです。 ガラス器具を洗わずに使い捨て、機器の調子が悪いと修理してもらうまで、あるいは新品が届くまで待っているような研究者は、大企業で養ってもらってください。弊社では、常勤社員一人当たりの年関経費を1000万円以下に抑えたお陰で黒字を達成し、既に投資した資金は回収した。派手な大学発ベンチャーでは研究員一人の年間経費が4000万円以上かかるとか? それでは会社が成り立つ前に破綻してしまうのも必然。 ちょっとした器具、機械でも大事に使おう。無駄使いをしていると、貴方も40歳で使い捨てにされますよ! ちなみに60歳の私はまだまだ使えそうなのでこれから一仕事。

79. 目標の達成はいつ?

この頃、研究者として納得できる仕事をしたいと思う。目標の達成にはほど遠いが、少しずつ目標に近づきたい。夢や目標は、そう簡単に達成してはいけない。若くして人生の目標を達成してしまった知人を見ると、決して幸せとは思えないのです。 毎日うまく行かずに必死になって頑張る。だからこそ生きていると実感できるのです。お迎えが来るまでこつこつ努力できれば、それがもっとも幸せな人生なのです。

80.留学

留学には2つの場合がある。一つは「外国で学生として学ぶ」という場合で、もう一つはもっと広く、「外国の習慣、学問体制などを身につける」、という意味で、遣唐使、欧米への使節団などがある。大学の教員の場合には後者を留学ということが多く、日本では常勤の職に就いて給与を保証されつつ欧米での生活を保証される。私たち理科系の場合には、欧米の大学で博士研究員(Post-doctoral Fellowship:大学の短期職員)として給与を支給されるので、私費留学者も多くなっている。  岐阜大学研究室の相棒である柳瀬助手が先日、米国、コロンビア大学博士研究員(中西香爾教授)として留学された。中西教授は私の恩師、岸 義人ハーバード大学教授と共に、世界に誇る天然物化学者である。柳瀬先生も岐阜大学の期待の星で、弊社取締役でもある。世界をリードする研究者として活躍されること間違いなしです。岐阜大学、長良サイエンスの関係者も負けずに大きな夢に向かって挑戦しよう。

81.夢のまた夢

最近、この長良サイエンス(株)は岐阜大学の学生諸君にも認知されてきたようだ。
学生の質問:研究室の優秀な学生は、先生の長良サイエンスに就職するのですか?
  私の返事 :優秀な学生は博士取得後に大企業のT薬品やA食品に就職するのです。その1〜2年後に、「長良サイエンス(株)の方がよかった」といって帰ってきてくれるのが理想。
  学生:それだと、長良サイエンスに就職するのは難しそうですね、とションボリ。
  私の返事:大企業よりも長良サイエンスのほうが面白そうです、と言えば可能性があるかも。
  学生:それなら頑張ってみる!

82.世界的傾向か、80歳前後の大先生が大活躍!

私がハーバード大学(米国、ボストン)に留学した1972〜1976年ごろに、ハーバード大学の大物教授として故R.B.Woodward教授(ノーベル賞受賞)と共に40名前後の巨大な研究グループを率いるE.J.Corey先生(後にノーベル賞を受賞、2006年現在78歳で現役)、1974年に教授になられた恩師の岸義人先生は現在68歳でバリバリの現役教授。 ニューヨークのコロンビア大学ではG.Stork教授(現在85歳)、中西香爾教授(現在81歳)が現役でご活躍中である。このような大先生方のご活躍は、還暦を迎えた私にとって願ってもない目標となって有難い限りである。 欧米では以前から、実力があればいつまでも現役として活躍でき、珍しくはない。しかし、それにしてもご高齢な大先生方が活躍されているのに、30~50歳台はどうしてしまったのか? もしかしたら、ちょっとしたアイデアによる短期的な研究に満足してきたのではないか? いろいろな解釈があろうが、ここらで慎重に考察する必要があるように思われる。

83.親の夢は子供にとっては悪夢?

子供に大学、大学院の高等教育の機会を提供して、少しでも豊かな人生を送って欲しいと願うのは親として当然の気持ち。しかし、いまや大学進学率は50%を超えて、22年間一生懸命勉強してもやっと平均レベルなのだ。その結果、なけなしのお金をはたいての教育が、子供にとっては極めて迷惑な、長期間にわたる虐めになっているのではないか? 本来の知識欲は、知りたいと思うことを必要に応じて知るから楽しいのであって、知りたく無いほどの膨大な量、期間となると話が違ってくる。大半の学生が絶望感とストレス一杯の長期学生生活を悶々と過ごしているとすれば、親の「過大な期待」、「過剰な教育」は子供にとってはありがた迷惑を通り越して「悪夢」である。

84.

この20年近く、教育、経済、等の日本を取り巻く環境は悪化し、その状況はまさしく「危篤状態」である。公的機関はこの状況を改善すべく、種々のアンケート調査と新規経済政策の構築に躍起となっている。我々のベンチャー企業にも毎月のように各種アンケート、施策説明会の案内等が送られてくるが、正直言って「そっとしておいて欲しい」というのが本音である。大学発ベンチャーの数を数えることなら小学生にもできるが、実体のない会社を数えてどうするのですか?

85.

弊社は、食品和漢薬中の薬理活性天然物、約150種の研究用試薬を生産してきた。幸いにも、独自の分離精製技術が高く評価されている。今では、低分子量の天然物なら何でも純粋にできる。この技術の一つは、天然物を超精密に分離精製するための独自のHPLC用充填カラムであるが、今回、このHPLC用充填剤の品質(微粒子の平均粒子径、粒度分布等)を測定するための装置(ベックマン・コールター社のマルチサイザー 3:定価約850万円)を購入した(2006.12)。 これは、シリカゲル等のクロマトグラフィー用微粒子担体の他に、ダイヤモンド等の精密分級研磨剤の品質検査機器で、ナノテク研究の必需品である。これで弊社は急発展を期待できる。

86.便利なようで、無ければ良かった物。

1.携帯電話: 突然、他人の家に土足で入り込むようなもの。落ち着きのない若者が増えたのは携帯電話のせい? 使用禁止の空間が必要でしょう。
2.パソコン: どんなに勉強しても勝てない相手。いつまでも覚えている。しかし、誰が使っても同じ答えになってしまう。賢い人が気の毒です。
3.増えすぎた大学: 幼稚園を卒業して20年すると大学の先生が教えている。「生徒のレベルは変わらず、単に年取っただけ」にならないように頑張ろう! 
4.競争社会:幼稚園から大学卒業までみんなで競争した20年余り。結論は「競争して疲れきっただけで夢は勝ち取れなかった」。

87.大学の実験、研究費は平等に!

日本の大学の研究費はお粗末で、岐阜大学の研究室(教員2名)に配分される研究費は100万円足らずで、博士課程の分を含めても150万円程度である。2〜4年生の今年の経費は一人当たりで年間5,040円である。4年生は毎日実験しているので、1日20円の実験費。もちろん、これでは足りないので、教員の研究費、外部資金(科学研究費等の競争的資金)などから融通して実験費用を捻出している。このような状況では、学生諸君が真面目に実験してくれると、その数十倍の実験費用がかかるので、教員は学生に「毎日実験しなさい」とは言えなくなっている。 一方、競争的資金が潤沢にある研究室では数千万円〜数億円の有り余る資金がある。このような貧富の差は、本当に必要なのだろうか? そのような格差をつけるために講演会、勉強会等の受益者集団が大活躍している。お金集めのために教員は多くの時間を割いている。 大学は学生、大学院生を教育、研究指導して社会に送り出す機関である。隣同士の研究室で、研究条件が数十倍も違っては同じ教育組織とは言えないと思うのだが---。

88.自作自演の人生はいかが。

企業に勤務していた私の同級生は、無事定年を迎えて悠々自適の生活に入っている人が多いようだ。大学では63〜70歳の定年が多く、学部長、学長を目指して頑張っている人も多い。私の場合には役職としての出番はなさそうだが、この長良サイエンス(株)では社員の皆さんを始め、多くの人たちに支えられて発展の一途をたどっている。従って、65歳で岐阜大学の定年を迎えても、好きな研究はいつまででも続けられそうです。この会社を始めた頃には「もう少し自分の出番が欲しい」と思って、この大学発ベンチャー創業と大学の活性化を計画したが、それが大当たり。自己評価としては「これ以上はないという大満足で他の出番は不要」と思っています。 どんなに偉くなった同級生でも間もなく現役から退いてしまうのです。さ〜て、私はこれから実験をひとつ---。残念ながら金華山を望む研究室はまだできていないが、それまで、しばらくは夢を追うことにしよう。

89.2007年の研究テーマは、「高等教育・研究のあり方」

私の研究テーマは、本業の天然物化学の研究から始まり、それに関連する精密分級、HPLC充填カラムの製法確立、ベンチャー創業、検索エンジン最適化技術等へと発展しつつ以下の様に発展してきた。
(1) 専門の天然物化学(1968〜)、
(2) 微粒子の精密分級による高分離能HPLC充填カラムの製造(1992〜)
(3) ベンチャー創業とその経営(1999〜)
(4) ベンチャー創業による大学の活性化(2005〜)
この長良サイエンス(株)は順調に発展しつつあり、大学とバイオ企業の一体型運営による大学・地域の活性化を達成してきた。今後はこれをさらに進めて、高等教育・研究のあり方について考えてみようと思っている。

90.私の教育論

実験科学を専門とする私には「教育」といえば、自分の専門科目の授業しか経験がない。そこで、まず身近で開かれる 大学教育改革フォーラムin東海(名古屋大学、2007.3.10)で自論をポスター発表することにした。このフォーラムでは、岐阜大学の黒木登志夫学長の基調講演に始まって、各種の教育改革例が報告・討論される予定で、各先生方の教育改革に対する御意見を拝聴できるのが楽しみです。

91.集団無責任体制

大きな組織でも最終結論を出す時には結局一人で決断することになる。もし多数決で決めるとしてもその結論はありふれた、無難な方向になってしまうだろう。それでは、飛躍的な発展は期待できないし、大勢が時間を掛けて議論しても無駄なことになることが多い。大学の教授会などはその典型で、数時間に及ぶ会議の間、大半の構成員は無言で黙祷しているかのような異様な雰囲気となってしまう。

92.高学歴社会の誤算1.初任給の違いは年齢の違い。

大卒、修士、博士課程の卒業者の初任給がそれぞれ月額20万円、22万円、25万円と求人票に記載されていると、普通の学生さんは「大学院まで頑張ろう」と思ってしまうようだ。しかし、初任給の違いは本当に人のレベルや社内の待遇の違いを意味しているのだろうか? 弊社のように高度な技術レベルを求める場合は別として、一般には、この初任給の違いは年齢(経験)の違いなのだ。たとえば、大卒後に2年かけて修士を卒業すると、初任給は2万円上がって22万円になるが、この金額は大卒後2年間働いた人が2万円昇給したのと同額なのだ。同様に、就職後5年が経過する27歳ごろには博士課程を卒業しなくても5万円程度は昇給して25万円程度になるのです。 つまり、高学歴になっても決して得をするとは限らないのです。これは高学歴を取得した人には驚嘆すべき事実ですが、経営者(雇用者)側からすると、ごく当然の事で、何年も勤務した社員と比較して、役に立つかどうかもわからない大学院新卒者に最初から高給を保証することなどできないのだ。

93.高学歴社会の誤算2.大学院投資はいくらかかる?

回答: 博士前期(修士)で700万円、博士前後期で1,800万円の投資
   大卒者の年俸を350万円とすると、大学院前期(修士)の2年間に、本来得られるべき2年間の年収約700万円は、家族からの教育費負担に頼ることになる。学生君は、「自分がちょっと質素な生活をして我慢した代わりに自由な時間を確保した」と思っているが、ご両親の立場から見ると、「就職してくれれば700万円の貯金ができるのに、修士2年間の授業料、生活費等の負担で400〜500万円はかかる」。いずれにしろ、家族単位で見ると、2年間で700万円、博士取得までの5年間には軽く1,800万円の投資である。

94.高学歴投資の誤算3.修士、博士の教育投資の回収

教育投資の回収は、給与表上では投資分の回収はまずできそうに無い。つまりは「高度な教育レベルを生かして、学部卒業者よりも早く、課長、部長以上に出世して元を取る」しかない。私の経験では、修士、博士でそれなりの実力がつき、真面目に努力していれば、好きな研究で活躍できるし、チャンスは十分あると思う。でも、そうは言っても、博士取得後に2年間自費留学(1972〜76にかけてハーバード大、岸義人研究室)した私は、30歳にしてやっと給与をもらえる大学教官(助手)になって現在に至ったが、現在、やっと30年の勤務年数です。大卒後8年間の無職の状態は正直きつかったです。何しろ、高卒の人が60歳まで勤務すれば42年間なので、その分を30年間で回収する必要があるのです。単純に計算すれば、勤務期間中常時、高校卒業者の42÷30=1.40倍の給与を貰っても、生涯賃金は高校卒業者と同じなのです。相当頑張らないと、高学歴の投資は回収できない厳しい現状を理解できましたか?

95.浪人、留年、フリーター等の1年の遅れは1,500万円の損失

1年留年するといくら損するか? と学生に聞くと、大抵は「正規に働くと200万円になる所をアルバイトで多少は稼ぐので1年で100万円ちょっとの違い」と答える。とんでもないです。正社員のボーナス込みの年俸は350万円前後。それも、350万円はその1年だけの損失で、その他にもっと大きな損失が待っているのです。1年遅れた人は、「新卒の人と同じ給与で良いから雇用して欲しい」と思うのですが、雇用者からは、「1年ブラブラした人にはそれなりの難がある。おまけに定年までの年限が短い。仮に本人は納得しても、同期の人よりも給与が安いといずれ不満が出る。上司になる人も使いにくい。」と見られて相当不利になる。 幸運にもよき理解者に出会って雇用してもらえたとしても、初年度だけでなく2年目以降も毎年、1歳年下の人と同じ給与しかもらえないのです。この1年の遅れによる生涯賃金の違いは300万円程度ではありません。すなわち年功序列賃金の日本では年々年俸が増加してついには初任給の3倍以上に達するのです。生涯賃金の違いは図を平行移動すると定年直前の最終年俸(千数百万円)になるのです。 オマケに公務員なら、退職金は以下のように計算します。カッコ内の年数が1年減ると、退職金は5〜7%?程度減少します(数百万円の違い?)。
退職金= 定数 x 最終給与 x (勤務年数 -20年?) 
また、同様に、最終給与を元に計算される年金までもが変わってくるのです。
かくして、1年の遅れは、少なく見積もっても1,500万円以上になるのです。
お金のことばかりを書いてしまいましたが、大事なのは、豊かな心、他ではできない経験、可能性、------などなど。それと、もう一つ、「長年努力してきた勉学・研究を、将来何かに役立てたいと思う気持ち」ではないでしょうか? いずれにしろ、何か一つ得られれば十分元は取れるでしょうから、少なくともこれらを意識して、高学歴投資に挑戦しよう。

96.将来の夢、目標は?

生物の誕生以来38億年、人類が誕生して300万年といわれている。したがって、もし生物の歴史を地球の7回り半(30万km)とすると、人類の歴史は東京〜名古屋間300km程度となり、この半世紀50年はわずか5メートルに過ぎないのだ。 世界で最も繊細な心と多くの素晴らしい国民性を引き継ぎ、しかも教育熱心であった日本人が、わずか半世紀の状況変化に対応できずに右往左往している。それだけに、この50年間の変化は人類誕生以来、最初の大変動なのだ。日々の食べ物、仕事に困り、教育したくても、その余裕がなかった時代から飽食、高学歴の豊かな時代を迎えた。将来の夢、目標を見据えて生きてゆくことが重要と思われる。

97.今の日本は学歴社会?

大学を卒業していれば、大企業の社長になれ、国家公務員のキャリアー組みとして大活躍した後で議員、知事などの政治家、あるいは天下り、などを保証されたのは昔の話となった。同世代の過半数が大学卒の学歴を取得する現在では、国立大学を卒業しても正社員にもなれず、あるいは正社員は厳しいからと、フリーター、派遣社員で気楽なその日暮らしを選んでいる。いわゆる学歴社会とはいえない状況である。

98.70歳定年、再雇用の提案

この半世紀の間に、寿命に対する就労年限の割合は極めて減少した。戦前までの就労年齢は12〜15歳で、当時の農業を中心とした生活では定年はなく体が動く限り働いていたものです。 現在では22歳、場合によっては30歳以降になっても定職に就かないことも多く、高等教育の長期化には歯止めがない。平均寿命が80歳を超えているのに対して、就労年限が30年程度では、一人の勤労者が2名の子供、老人を扶養しなければならず、保険制度が破綻するのは当然であろう。 そこで提案を一つ。「60歳の定年を過ぎたからと悠長に海外旅行を楽しむ暇があるのなら、次の世代に負債を残さないように70歳で定年、再雇用する」 ちなみに私の場合、金華山が見える実験室で実験できるように、とりあえずは65歳で再雇用の予定ですが---。

99.米ファイザーが愛知県の研究所閉鎖を検討(2007.1.20)。

独バイエルは日本研究所を売却。英グラクソ・スミスクラインも国内の研究所の売却を検討。国内の薬品会社も合併等が連続。 ひょっとしたら、外国人には日本の将来は暗いと思われているのだろうか。私は日頃から、医薬品開発は日本人に適したハイテク産業であると信じている。ここらで、我々日本人の医薬品研究レベルを世界に知らしめようではないか!!

100.

約8年前に、大学の活性化、地域産業の育成、研究者の地位向上等を目指してこの大学発ベンチャーを始めたが、幸いにも他社にない独自技術のお陰で、殆んどセールスに出かけること無く事業が発展してきた。実際に私や社員は講演やブース展示以外には出かけたことがないが、今では150種類の標準品試薬のほかに、薬品、食品、化学会社からの受託業務(精製、合成、研究)が順調である。数人の会社で、研究、生産、販売に十分な時間を掛けることはできないので、独自の技術があると極めて有利。岐阜大学と岐阜大学発バイオ企業・長良サイエンスの発展に万歳!!