これぞ 大学発ベンチャー

2007年12月1日

岐阜大学発バイオベンチャー
長良サイエンス(株)代表取締役 中塚進一
(岐阜大学教授の研究成果活用兼業)

大学発ベンチャー約1500社が創業した。この中には日本中が注目する「憧れの大学発ベンチャー」がいくつもできて素晴らしい。

弊社の場合には、わずかな自己資本で細々と事業化したのに対して、華々しくスタートされる皆さんの大学発ベンチャーが羨ましい限りである。そこで大胆にも、この大学発ベンチャーの代表格とされる大学発ベンチャー・A社と弊社・長良サイエンスを比較してみよう。

複数の大企業の出資を獲得して株式公開を果たされた超有名な大学発ベンチャーA社の資本金は約50億円。A社の株式は現在、資本金の約12倍で取引されているので、この大学発ベンチャーの価値は約600億円である。さすがに日本を代表する大学発ベンチャーである。あまりの違いに同じ大学発ベンチャーとは思えないほどである(表1)。
表1 A社と長良サイエンスの比較

憧れのA社(2004.12)長良サイエンス(2007.6)
創業1999年12月1999年9月
資本金51億円3,000万円
従業員数84人8人
事業収益26億円6,800万円
事業費用42億円5,600万円
損益計算△15億円+950万円
創業6年通算損益△29億円+1,900万円

A社(社員数84人)の年間事業費は42億円(社員一人5,000万円)に達している。A社の社員は一人で弊社の年間総事業費4,468万円以上の経費(弊社社員の約9倍)を使えるとは、なんとも豪勢なことで羨ましい限りである。ところが、A社の事業収益26億円は親会社からの研究開発費負担で、まだ商品がなく昨年度は約15億円の赤字決算。この調子ではまだ当分親離れできそうにない。

一方、弊社の場合には8人で試薬等の独自商品の売り上げが6,800万円あり、昨年度は950万円の黒字を達成(創業以来の通算でも黒字)して自立成長を始めている。

2007年は以下の投資を実施した。

1.岐阜大学との共同研究費等 642万円
2.コールターカウンター、旋光計等 約1,100万円

また、創業母体である岐阜大学への貢献は以下の通りで、すでに「大学の活性化を目的とした創業」の目的を十分達成している。

1.研究用試薬数千万円分の提供
2.会社設備の提供
3.就職先の提供(2004年2名、2005年1名を新規採用)
4.奨学寄附金642万円の提供(2007年)。
5.新聞等のマスコミ報道(約25回)による岐阜大学の知名度向上、岐阜大学受験者増。
6.総合科目「大学発ベンチャー創業と大学」による岐阜大学の活性化。

次の目標は以下の通りで、地域社会に根付いた大学発バイオ企業を目指している。

1.社員の待遇改善(数千人規模の薬品会社程度に)と研究者の地位の向上。
2.社屋、研究棟の確保。
3.創業母体である岐阜大学の活性化(知名度の向上、研究費、就職先など)。

2007年12月1日  岐阜大学発ベンチャー:長良サイエンス(株)創業者 記す

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「長良サイエンス」