大学発ベンチャー「その期待される姿」

2007年12月1日

岐阜大学発バイオベンチャー
長良サイエンス(株)代表取締役 中塚進一
(岐阜大学教授の研究成果活用兼業)

弊社は岐阜大学の研究成果を活用して教官自らが創業した完全独立型の大学発ベンチャーで、「大学のための大学発ベンチャー」を目指している。国立大学教官初の社長兼業。1500社以上の大学発ベンチャーが創業したものの、多種多様な大学発ベンチャーが混在している。そこで、大学発ベンチャーを創業した立場から、大学発ベンチャーについての私見を述べてみたい。

岐阜大学発バイオベンチャー:長良サイエンス(株)の概略は以下の通りである。


弊社は岐阜大学の研究成果を活用して1999年に創業した岐阜大学発ベンチャーで、国立大学教官の兼業が認められた2000年より、筆者がその代表取締役(社長)を兼業している。現在、役員4人、研究員4人及びアルバイト2人総勢10人で、食品、和漢薬成分を中心に150種類以上の研究用試薬を製造、販売している。その大半は世界初商品で、年間総売上6,800万円で黒字を達成。独自の技術による受託精製、受託合成、受託研究の割合が年々増加している。創業者が資本の100%を保有して完全独立型経営により続伸中。


大学発ベンチャーとは、大学を創業母体としたベンチャー企業のことであり、大学の技術を主たる創業技術として利用し、その成果を広く社会に還元することを目的としている。大学発ベンチャー企業の創業母体が大学である以上、ベンチャー創業による大学側のメリットがあって当然であろう。一方、ベンチャー企業とは、創業者の独創的アイデア、技術と確たる信念に基づいて自己資金等によりベンチャーを創業し、自ら必死になって努力する企業のことである。したがって、大学発ベンチャーとしては以下の4項目が重要となる。

 1.大学の研究成果を基礎として創業すること。
 2.大学関係者(教員)が主たる出資者となり、大学側の主体性を保つこと。
 3.常勤社員を雇用し、商品の定常的な売上げがあること。
 4.創業に関して、大学側のメリットがデメリットを大きく上回ること。

以上の観点からすると、(1)大企業が大口出資者で大学の主体性を保てない、(2)商品がなく常勤社員が不在、(3)大学側のメリットがない、又は微小、などの場合には大学発ベンチャーとは言えない。本来、採算面での危険性を伴う最先端の研究は大企業自らが行うべきものであり、大学発ベンチャーの名を借りたリスク分散型子会社や、大企業の宣伝のための会社であってはならない。ましてや、公的研究資金の確保を目的とした幽霊会社などもっての他である。 弊社の場合には、大学への共同研究費、寄附金や研究材料数千万円相当の無償提供、学生への就職先提供、研究者の地位向上、学生をやる気にさせる、大学の知名度向上、などで大学側のメリットは極めて大きい。近い将来、「これぞ大学発ベンチャー」、と言える会社にしたい。