いつまで 大学発ベンチャー
2007年12月1日
岐阜大学発バイオ企業
長良サイエンス株式会社
代表取締役 中 塚 進 一*
*岐阜大学教授の研究成果活用兼業(文科省、人事院承認)
大学発ベンチャー
バブル崩壊後の暗い社会で一筋の明かりを感じさせる「大学発ベンチャー」なる言葉に、うかつにも弊社も惑わされてその名前「大学発ベンチャー」を使用してきた。しかしながら、その言葉を成す「大学」と「ベンチャー」の意味を考えてみると、共に「明るい未来」を感じさせる言葉ではあるが、お互いに異質な意味を持つことに気が付く。
大学は学問の真理を教え、研究する所である。その過程では各種の試行錯誤を重ねるが、高い学問研究のレベルがあれば、より確実に予測・実行することができるはずである。一方、ベンチャーとは、冒険、賭けをする企業のことで、他人には成功する確率が低く見えても、創業者には成功するとの確固たる信念があって「成功するまで自分で努力し続ける」、という意味が含まれている。
以上の観点に立てば、大学発ベンチャーは、他の追随を許さない高度な学問研究レベルがあって、ほぼ確実に成功できるはずである。またその発案者自身が(できれば自己資金で)必死になって創業と会社発展に努力することが求められる。したがって、ちょっとした発案と、少額出資、役員の名義貸し、宣伝のための講演活動などでお茶を濁すようでは、大学発ベンチャーとは到底云えないと思う。
大学教員の役員兼業
大学発ベンチャー創業支援の一環として、2000年4月に国立大学教官の会社役員兼業が許可された。筆者はその前年、1999年9月に岐阜大学の研究成果を活用して大学発ベンチャーを立ち上げていたので、早速文部省、人事院に兼業申請をした。研究成果活用兼業として弊社代表取締役への就任が認められて国内初の国立大学教官の社長兼業例となった(2000年8月)。
現在では約300人程度の大学教員が会社の代表取締役、取締役、監査役などの役員を兼業していると予想されるが、その大半は無報酬の役員兼業である。各教員がアイデアを出したベンチャー企業のために役員の名前を無償で貸して協力される姿は美談とも見えるが、そうまでして後押ししなければならないとは、いささか不思議である。
現状では、有限会社は役員1名で、株式会社では3人の役員で会社を設立でき、しかも役員報酬は無償でも可。したがって、無報酬の役員だけで、常勤社員不在、売上げ無しでも会社として経費はほとんどかからずに存続できる。そんな会社の役員でも兼業していると大学内では評価されてしまうのだ。
いつまで大学発ベンチャー
弊社もこれまで「大学発ベンチャー」の一つとして考えてきたが、これで創業以来8年が過ぎ、年間売り上げも6800万円に達した。社員数、売上げ共に順調に推移し、5期連続黒字で、そろそろ「ベンチャー」の領域から脱却したいと思うようになった。創業30年以上、数百人規模でも大学発ベンチャーと呼ばれている例があるが、30歳の幼稚園児のように違和感を覚えてしまう。弊社の場合には、そろそろ人並みの税金を納めて「ベンチャー」を卒業したい。
事業の目標
「大学発ベンチャー」を卒業して、世界的バイオ企業としての地位を築く。
1.当面の目標
常勤社員10人以上、売上げ2億円規模(納税額2千万円)。
自社ビルを用意する。
2.将来の目標(5年後)
100人規模のハイテク企業に成長し、大学、地域に貢献。
長良賞を創設して研究者の地位向上を達成。
納税額 数億円(スポーツ選手以上)。
研究を楽しみながら 世界を制す
長良サイエンス(株)